短編
バカでスミマセン

いでよ!機械獣!
「ブレスト・ファイヤー!」


改めて言われると自信がないなぁ
私、ばか?

 

「夏子の嫌いなお客ベスト5」の中に、こいつは確実に入っている。

50歳代。

未婚。

ちび。

不潔。

教養・知識無し。

最低!

 

この人はカラオケが大好きなのだが、

歌詞を自分の好きなように変えて歌ってしまう。

ここまではよくある話だ。

が、こいつは、いやな奴だから、変な風に変えるんだよね。

「絶唱」

♪何故死んだぁ〜あぁ〜夏子♪(ホントは小雪)

おいおいおい!殺すな!

 

「銀座の恋の物語」

♪心のぉ〜そこーまで〜しびれるよ〜な〜

 夏子さんが(本当は吐息が)せつな〜いささやきだから〜♪

わけわかんないよ(笑)。

まぁ、お仕事、お仕事。このくらいは我慢できる。

 

時間が経って酔いが回ってくると・・・・

今度は罵詈雑言・セクハラ発言の嵐がやってくる。

これがたまんないのよ。

「なっちゃんの胸って本当、大きくて良いよねー」

「・・・・」(何が良いの?)

「この前、なっちゃんを裸にしてさあ、写真撮ってる夢見ちゃったんだよ。

 今度、なっちゃんが夢に出てきたら・・・

 もっとすごーいことしちゃおうかなぁ〜」

普通なら、「いやだぁ〜」とかなんとか言えるんだけど、

こいつにだけは言いたくない。

お金使ってくれる人なら我慢もするけど、

「けち」じゃーねぇ。

一番腹立つのはこれ。

「ねぇ、なっちゃん、」

「はい?なんですか?」

(笑顔、笑顔。仕事だからね!)

「ば〜か」

「・・・・・・」

「あ、怒ったの?怒ってる?ごめんね〜」

あやまるんなら初めから言うな!!

酔っぱらいに「ばか」と言われるのは平気だけど

「ばか」に「ば〜か」って言われるのは我慢できないのだ。

(近所で評判の優しい夏子さんでも、

 ”あしゅら”になるときがあるのだ!)

←あしゅら男爵(笑)