健太郎

第4話

なにっ!


まじかいな!健太郎

 

カウンターに座ったときから、今日の健太郎は、何か変だった。

何だろう?何か隠し事をしている子供のように、落ち着かない。

話のきっかけになるので、私は時々お客さんにこう話しかける。

「最近、なにかいいことありましたか?」

たいていは、「ないねー。」とか、「あるわけないじゃん。」なんて返事が返ってくる。

ところが、彼が言ったのは、

「・・じつはさ、おれ、彼女が出来て、つきあっていたんだよ。

「ええーっ!?」

私は、倒れるかと思ったが、かろうじてそれだけは免れた。

ふらふらとよろめきながら、

「それホント?いつから?どこで知り合ったの?どんな人?」と矢のように質問を

浴びせながら、彼の話を一言も聞き逃すまいと、神経を集中させる。

「つきあいだしたのは、3ヶ月くらい前からかな。時々行く、あ、ここじゃないよ。

スナックのママさんに、会うたび、女の子紹介してよ、って言ってたんだ。」

「うん、うん。」「そしたらさ、ある日、紹介してくれたんだよ。」

「夏子ちゃーん、カラオケかけてー」「はーい」

(もう、ママったら、いいところなのに。早く続きを聞かなくちゃ。

こういう時は、手動式のカラオケって不便だなー。)

「それから?どんな人?」「そこのスナックで働いている子なんだけど、、。」

「年は?」「25歳。」

「へぇ〜。じゃ、良かったじゃない。健太郎さん、おめでとう。」

まぁ、そうなんだけど、でも、金がかかってしょうがないよ。」

「お金?ある程度はそりゃ、かかるでしょう。」

「だってよ、彼女と会うときは、彼女の店で会うんだよ。

店に行ったら、飲まないわけにはいかないしさ。」

「日曜日にはあわないの?」

「日曜日は、彼女は仕事なんだよ。彼女の休みの日は、オレが仕事だしさ。」

「じゃ、日曜の昼間か、彼女の休みの日の夜会えば、お店に行かなくていいじゃない。」

「昼間は、彼女があまり、時間がとれないし。だって、朝起きるの遅いからさ。

夜は、おれ、次の日仕事だから、早く寝たいしさ。」

「なにそれ!」

「そんな訳で、時間がなかなか合わないし、店に行くと、一回3〜4万かかるんだよ

(そんなに使うのかー。すごいな。でも、これって・・・店側としてはおいしいよね。

「だから、この間、別れちゃったんだ。

「ええーっ!!もう別れたの?」

「しかも、おれ、5万円の指輪買ってあげてから別れたんだぜ。」

「どーして!別れるって言う女に指輪なんか買うの!」

約束してたから。だって、別れた後もおれ、いい人でいたいと思ったからさ。」

「ちょっと、お人好し過ぎるんじゃないの?

ま、いいや。で?一回くらいホテルには行ったんでしょうね?

それが、行かなかったんだ。時間合わなかったし。」

「健太郎さん、だめだよ、それじゃ。3ヶ月もの間、なにやってたの?

指輪まで買って。もう、しょうがないなぁ。」

(それって、単に、店と女の子に食われてただけじゃない。

 ばっかじゃないの?しかも、Hなし。

 

前言撤回。

(一回やらせてやって欲しい。)じゃなく、

   (騙されないようにする方法)を教えてあげて。

 

つづく  次回、最終回か?