旭ちゃん
第3話
本人はゴルゴ、親父は?
親父
旭ちゃんがその日来たのは珍しく遅い時間だった。
「いらっしゃいませ。どうしたんですか?こんな遅く」
彼の言うことには、
「今日、仕事から帰ってきたら親父(同居・70歳)がいなかった。
ああ、一人でのみに行ったなと思って帰りを待ってたんだけどよ、
まだ帰ってこないんだよ。
前にも飲みに行った先で酔っぱらってさ、
パトカーに送られて帰ってきたことがあったからさ。
心配なんだ。もう年だからな」
「それじゃ、心配だね。他に行きそうなところはないの?」
「全部さがしたよ。くそっ、あのバカ親父め!」
1時間後。
「夜は寒いから風邪でもひかなきゃ良いけどねー」
「バカ親父のやつ、少し風邪でもひけばいいんだ」
その30分後
「夏子ちゃん、今日はもう帰っていいよ」
「じゃ、お先に失礼します」
さらに1時間後
「旭ちゃん、もしかしたらお父さん、家に帰っているかもしれないよ」
(あんたが帰れば店を閉められるんだよ!)
「あのバカ親父め!」
次の日。
「なっちゃん、昨日は参ったよ」
とママ。
「旭ちゃんさ、お父さんがいない、心配だ、って言いながら
あれから1時間も飲んでたんだよ。
そんなに心配なら探しにいけばいいのにねー」
・・・本当はただ飲む場所が欲しかっただけだったりして。